朝日町ワインとは?
朝日町ワイン(ASAHIMACHI WINE)は、山形県の中央部、西村山郡朝日町(にしむらやまぐん あさひまち)の大谷(おおや)にあるワイナリーです。町と地元の農協が出資する会社で、町の名前をそのままワインの名前にしています。英文の会社案内によれば、2024年の時点で年に34万本ほどを造っています。
このワイナリーは、ワインを飲むためではなく、ワインからある物質をとり出すために生まれました。会社の沿革によれば、1944年、政府は全国のぶどうの産地に命じてワインの工場を造らせました。ワインに含まれる酒石酸から、軍が電波探知機に使うロッシェル塩をとり出すためです。朝日町の工場も、そうして「山形果実酒製造有限会社」として始まっています。
最上川と雪の山あい
朝日町は、町の面積の4分の3ほどを森が占める山あいの町です。真ん中を最上川が流れ、西には磐梯朝日国立公園の中心をなす朝日連峰がそびえます。会社は、ブナの原生林が残り、春まで雪をいただくこの山並みを、ぶどうが育つ環境として紹介しています。
冬の雪は深く、英文の会社案内には、6フィート、つまり1.8メートルほどの雪に埋もれた冬のぶどう畑の写真が載っています。町の特産はりんごで、町には実の季節にりんごを湯船に浮かべる「りんご温泉」もあります。
会社が掲げる言葉は「良いワインはすぐれた葡萄から」です。英文の案内は、朝日町は腕のよいぶどう農家がいて、よいぶどうを育てるのに向いた土地だとし、町の契約農家の写真を載せています。ワイナリーの前の自社の畑では、ヨーロッパの品種のメルロ(Merlot)とシャルドネ(Chardonnay)を垣根仕立てで育て、「葡萄の木」の持ち主を募って、収穫や仕込みを一緒にする取り組みも続けてきました。
雪国の畑にも、暖かさの影響は出ています。毎年9月の「朝日町ワインまつり」では、2025年から樽からのワインを出すのをやめました。ぶどうの収穫が早まり、まつりのための樽を用意する時期が、ふだんの仕込みのいちばん忙しい時期と重なるようになったためだと、まつりの案内は説明しています。
歩み
戦争が終わったあとも工場は残り、1952年からは大手のワイン会社の下請けとして、ポートワインの原酒を造りました。1973年に農協の援助を受けて自分たちのワインを造り始め、「サンワイン」と名付けています。
1975年、ワインブームで売れ行きが伸びたのを機に、山形朝日農協と朝日町の共同出資による第三セクターの会社になりました。1979年、マスカット・ベーリーA(Muscat Bailey A)、セイベル(Seibel)、リースリング(Riesling)を原料にした新しい商品「朝日町ワイン」が生まれます。1990年には会社の名前も有限会社朝日町ワインに変わりました。
1985年からはブランデーの試験的な蒸留も始め、1999年に「エスポワール 高野(たかの)」として売り出しています。2000年には、見本のぶどう園と広場、瓶詰めの設備、試飲のできる売店を備えた施設「ワイン城」ができ、工場見学を無料で受け入れる観光ワイナリーになりました。会社は、2016年の伊勢志摩サミットの日本ワインに選ばれたことも紹介しています。
代表的なワイン
マイスターセレクション キュヴェ マスカット・ベーリーAは、町内の契約農家が育てたマスカット・ベーリーAを、フランスの樽で11か月熟成させ、瓶に詰めてからも1年半以上寝かせた赤ワインです。会社の資料では、熟したプラムのような香りにブラックベリーやスミレが重なり、なめらかな渋みのミディアムボディとされています。2021年のものは、2025年にロンドンで開かれた三つのワインの品評会(IWC、IWSC、デキャンター・ワールド・ワイン・アワード)でそろって銀賞を受けました。
スパークリング ルージュは、辛口の赤ワインの発泡酒です。会社は日本では珍しいとしていて、ラズベリーや野いちごのような赤い果実の香りがあるとされています。
町の農家の得意な品種を使ったワインもそろっています。山形スパークリング デラウェアは、山形県産のデラウェア(Delaware)を低い温度で発酵させた泡のワインで、辛口と甘口があります。辛口はマスカットや金木犀にたとえられる香りがあると会社の資料にあり、刺身や寿司、山菜の天ぷらと合わせることを勧めています。レース デラウェア マセラシオンは、デラウェアを皮や種ごと漬け込んで造る、オレンジ色の白ワインです。
調査時点(2026年10月27日)の公式の通販の税込価格は、山形スパークリング デラウェア(750ミリリットル)が1,892円、マイスターセレクション キュヴェ シャルドネが3,630円でした。マイスターセレクション キュヴェ マスカット・ベーリーAは、2024年8月の英文の会社案内に国内の小売価格3,511円とあります。

