秋保ワイナリーとは?
秋保ワイナリー(AKIU WINERY)は、宮城県仙台市の秋保(あきう)温泉郷にあるワイナリーです。仙台の中心部から車で30分ほどの温泉地で、2015年12月に開業しました。会社は、震災のあと宮城県で初めてできたワイナリーだと紹介しています。
2011年3月11日の東日本大震災で、設計事務所に勤めていた毛利親房(もうり ちかふさ)が手がけた宮城県女川町の温泉施設「ゆぽっぽ」が津波にのまれ、土台だけが残ります。復興の案を練るなかで、山元町にあった宮城で唯一のワイナリーが津波の被害を受け、県内のワイン造りが途絶えてしまうことを知りました。公式サイトは、そのときの思いをこう伝えています。
ワインには人と人、食と人をつなぐ力がある。ワイン産業が復活すれば、きっと地域の産業を巻き込んで盛り上げられる
谷を抜ける風と秋保石
ワイナリーとぶどう畑は、南北を山に挟まれた谷間の、南向きの斜面にあります。すぐそばの渓谷を名取川が流れ、公式サイトは秋保を「風の谷」と呼んでいます。谷と川を渡る涼しい風が夏のあいだも畑の畝のあいだを吹き抜け、蒸し暑い日の湿気を飛ばし、実を冷やして、酸を保ったままぶどうを熟させる、と会社は説明しています。
畑の背後には、「秋保石(あきういし)」と呼ばれる凝灰岩を掘り出してきた山があります。会社は、この秋保石を含む土からミネラル感のあるワインが生まれるとしています。
畑には、赤ワイン用のメルローやピノタージュ(Pinotage)、白ワイン用のピノ・グリ、ゲヴュルツトラミネール(Gewürztraminer)、シャルドネ、アルバリーニョ(Albariño)など12種類のぶどうが、7,000本ほど植えられています。会社概要には「2017年現在2haに16品種7,000本」とあり、品種の数はページによって違います。
歩み
毛利が最初にぶどうを植えたのは、秋保ではありませんでした。東北沿岸の再生をめざすプロジェクトの一つとして「ワインヴィレッジ」を構想し、かつてワイナリーがあった沿岸の土地で10種類のぶどうを育て始めます。ところが、津波で土に残った塩がぶどうの育ちを妨げ、思うように進みませんでした。公式サイトによれば、一時はあきらめかけたものの、家族の言葉に背中を押されて、別の土地でやり直すことにしたといいます。
ぶどうを育てる「農」と、ワイナリーを建てる「商」の両方に向いた土地はなかなか見つからず、友人の紹介でたどり着いたのが、秋保温泉の2ヘクタールの耕作放棄地でした。生い茂った木を切り開く作業には、延べ200人ほどのボランティアが加わっています。2013年に農地が決まり、2014年3月に株式会社仙台秋保醸造所を設立し、その春からぶどうの木を植え始めました。ワイナリーを建て、2015年12月に開業しています。
会社は、ぶどうの栽培と醸造のほかに、ワイナリーを開きたい人や学生の研修の受け入れ、温泉旅館と組んだ宿泊プランなど、ワインを入口にした地域づくりを事業に掲げています。2020年には、東北の酒造会社や飲食店と「テロワージュ東北」を立ち上げました。テロワージュは、土地の気候風土を表す「テロワール(terroir)」と、料理と酒の組み合わせを表す「マリアージュ(mariage)」を合わせた造語です。その考えを形にする場として、2024年8月にショップとカフェをレストラン「TERROAGE AKIU(テロワージュ秋保)」に改めました。
代表的なワイン
秋保ワイナリーのワインは、自社の畑のぶどうだけで造られているわけではありません。会社は、東北産のぶどうやりんごを使ったワインやシードル(りんごの発泡酒)を造っていると紹介していて、通販の説明を見ると、山梨県や山形県のぶどうから造るワインもあります。
鮨ワイン(SUSHI WINE)は、名前のとおり、お鮨に合わせるために開発した白ワインです。会社は、宮城県が世界三大漁場の一つとされる三陸・金華山沖を抱えていることを挙げ、地元の魚介をお鮨とワインの組み合わせで味わうために試行錯誤を重ねたと書いています。ぶどうは山梨県産の甲州で、酵母を選び、皮ごと数日間低い温度で漬け込む「醸し発酵」をして、ゆずやすだちのような和の柑橘の香りと、甲州のうまみを引き出したとされています。アルコール度数10%の辛口です。
シャルドネ 2025は、山形県産のシャルドネで造る辛口の白ワインで、「日本ワインコンクール2026」で銀賞を受けました。宮城県蔵王町の森林保全で出た間伐材のミズナラ(ジャパニーズオーク)を焼いて使い、香りを添えています。柔らかな口当たりと穏やかな酸があり、会社はキッシュや白身魚のムニエル、グラタンのようなバターの香ばしさのある料理を合わせ方に挙げています。
ほかに、秋保クラフトシードルなどのシードルも造っていて、国内外のシードルのコンクールで賞を受けています。
調査時点(2026年10月27日)の公式通販の税込価格は、鮨ワイン(2024年、750ミリリットル)が3,410円、シャルドネ 2025(750ミリリットル)が3,300円でした。

