モリーゼに、DOCGはありません。
山と丘がほとんどを占める、小さな州
イタリア南部の、アドリア海に面した州です。北はアブルッツォ、西はラツィオ、南はカンパーニア、東はプーリアに接し、広さは州のなかで下から2番目です。州都はカンポバッソ(Campobasso)です。ワインの生産規定は、州の土地のうち山が5割あまり、残りが丘陵だと書いています。百科事典のトレッカーニによれば、海沿いの平地はごく細い帯にすぎず、気候は海沿いでは海の影響を強く受けますが、山あいでは大陸的で、内陸は寒暖の差が大きく、雨が多く、しばしば雪になります。
ぶどう畑は、山と海のあいだの丘に広がります。州のなかだけを流れる唯一の川がビフェルノ川で、その名を持つビフェルノ(Biferno)の産地は、州都から海辺の町テルモリ(Termoli)までのカンポバッソ県の村々です。決まりでは畑は丘に限られ、赤ワインとロゼワインの畑は標高500メートル以下に置きます。ティンティリア・デル・モリーゼ(Tintilia del Molise)の産地は、州の中ほどから高いほうの村々に多く、畑は標高200メートル以上の丘と決まっています。
土着の黒ぶどう、ティンティリア
ティンティリア(Tintilia)は、この州の土着の黒ぶどうです。生産規定によれば、18世紀の終わりには栽培されていたことが知られ、1810年には地元の農学者ラッファエーレ・ペーペ(Raffaele Pepe)が書き残しています。モリーゼ大学の研究で、この土地に固有の品種であることが確かめられたといいます。ティンティリア・デル・モリーゼは、このぶどうを95パーセント以上使う赤ワインとロゼワインで、規定はその香りに、はっきりとしたスパイスの調子があると書いています。ビフェルノの赤ワインは、モンテプルチャーノ(Montepulciano)を主体に、アリアニコ(Aglianico)を1〜2割加えてつくります。
産地や品種、造り方の条件を満たしたワインだけが名乗れる名前を「原産地呼称」といい、そのうち条件のより厳しい区分をDOCGと呼びます。イタリア農業省の呼称一覧(2026年3月時点)では、モリーゼ州にDOCGはなく、基本の区分であるDOCが4つあります。産地をゆるやかに示す区分(IGT)は、2026年5月の省の一覧で2つです。
ブナの森の山と、古くからの手わざ
雨の多い季節は、資料によって書き方が違います。トレッカーニは秋と春を挙げ、ビフェルノとティンティリアの決まりの文書は、年の雨の6割ほどが秋から冬に降るとしています。山の上はブナ(faggio)の森で、下るにつれてナラの仲間の林に替わり、標高400メートルより下では森が切り払われて畑になりました。
ローマより前、この土地にはサムニウム人(Sanniti)が暮らし、その言葉と文字で刻まれた紀元前4世紀の碑文が見つかっています。モリーゼの名は中世のノルマン人の伯領の名から来ていて、もとは一つの城の名でした。アニョーネ(Agnone)の鐘づくりはマリネッリ鋳造所(Fonderia Marinelli)が受け継ぎ、スカーポリ(Scapoli)には楽器ザンポーニャ(zampogna)の工房があります。カンポバッソでは聖体の祝日(Corpus Domini)に、1748年に考案された13基の山車「ミステーリ(Misteri)」を男たちがかついで町を行きます。

