Vino Storia

ワインのお話

カラブリア

高台から見下ろした、緑の斜面のふもとに続く白い浜と、青緑色に澄んだ海。浜の先の岬の上に町が広がっている
3月のカーポ・ヴァチカーノ。岬の南に続くティレニア海の海岸Benjamin Smith / CC BY-SA 4.0 / Wikimedia Commons(長辺1280pxに縮小)
カタンザーロティレニア海イオニア海1 チロ・クラシコ1
名前になっている村 地域の名前の呼称。生産規定が挙げる村をまとめた範囲のなかほど 点が重なるところは少しずらし、元の位置へ線を引いています。 地図: Istat(CC BY 4.0・加工あり)
  1. チロ・クラシコ Cirò Classico

長靴の爪先で、山が海に迫る

イタリア半島の南の端、長靴の爪先にあたる州です。ティレニア海(Tirreno)とイオニア海(Ionio)にはさまれ、州都のカタンツァーロ(Catanzaro)は二つの海を分ける地峡の上にあります。バジリカータとの州境にはポッリーノ(Pollino)の山々、なかほどには高原のシーラ(Sila)、南にはアスプロモンテ(Aspromonte)があり、イタリア政府の観光サイトは、山と海の近さをこの州の特徴に挙げています。

ぶどう畑の中心は、イオニア海側のクロトーネ県(Crotone)の北の端にあるチロ(Cirò)の丘です。生産規定によれば、畑は海辺から標高460メートルほどまでの丘に広がり、西のシーラの山並みと東の海の両方から気候の影響を受けます。雨は秋と冬に集まり、夏は水が足りなくなるほど乾きます。コゼンツァ県(Cosenza)には、二つの海岸からシーラの麓までを産地とするテッレ・ディ・コゼンツァ(Terre di Cosenza)があります。

ガリオッポの赤ワインと、干したぶどうの甘口ワイン

チロの赤ワインは、黒ぶどうのガリオッポ(Gaglioppo)からつくります。そのうちチロとチロ・マリーナの二つの町の畑に限り、ガリオッポを9割以上使い、3年以上(うち木の樽で半年以上)寝かせたものが、チロ・クラシコ(Cirò Classico)です。色はルビー色で、赤い果実とスパイスの香りがあり、味は辛口でしっかりしています。生産規定は、このワインが昔はクリミサ(Krimisa)と呼ばれ、古代オリンピックの勝者に贈られたという言い伝えを記しています。

南のイオニア海沿いの町ビアンコ(Bianco)では、白ぶどうのグレコ・ビアンコ(Greco bianco)を葦の簀の上で日に干すなどしてから搾る甘口ワイン、グレコ・ディ・ビアンコ(Greco di Bianco)がつくられます。色は琥珀色で、柑橘の花の香りがあります。

産地や品種、造り方の条件を満たしたワインだけが名乗れる名前を「原産地呼称」といい、そのうち条件のより厳しい区分をDOCGと呼びます。イタリア農業省の呼称一覧(2026年3月18日版)では、この州のDOCGはチロ・クラシコのひとつだけで、DOCは9つです。チロ・クラシコは2025年にEUの登録を受けた新しいDOCGで、2025年3月時点の原産地呼称の保護協会連合会(Federdoc)の冊子には、カラブリアのDOCGはまだ載っていません。産地をゆるやかに示す区分(IGT)は10あります。

夏に涸れる川と、いくつもの言葉

百科事典のトレッカーニによれば、海沿いと低い山地は地中海らしい気候で、夏と冬の気温の差は小さく、雨は11月から4月に多く降ります。川の多くは「フィウマーラ(fiumara)」と呼ばれる急流で、冬には荒々しくあふれ、夏には川床が干上がることもあります。森はシーラとアスプロモンテの高いところに残っています。

古代にはギリシャ人の植民市が栄え、クロトーネは哲学者ピタゴラスが学派を開いた町とされています。10世紀のビザンティン帝国のもとではギリシャ化が進み、聖バシレイオスの戒律に従う修道院が広まりました。州の憲章は、アルバニア系、ギリシャ系、オック語系、ロマの人びとを守ると定めています。アルバニア語が話される村は、同じ百科事典によれば数十あります。