ヒトミワイナリーとは?
ヒトミワイナリー(Hitomi Winery)は、滋賀県東近江市の山上町(やまかみちょう)、合併前の永源寺町にあるワイナリーです。造るワインはすべて、濾過をしない「にごりワイン」です。ぶどうの成分を漉し取らずに瓶に詰めるので、瓶の底に成分が沈み、ワインは少し濁っています。
始めたのは、大阪の服飾の商社、日登美(ひとみ)株式会社の社長だった図師禮三(ずし れいぞう)です。公式サイトによれば、1984年、60歳を機に会長に退いたとき、本当に自分のやりたいことをやろうと決め、大のワイン好きだったことから、まったくのゼロから自社の畑とワイナリーまでつくってしまいました。3年の試験醸造を経て、1991年にワイナリーを開いています。
会社は、にごりワインを造る理由をこう書いています。
個性的に楽しく、農産物であるワインを美味しくお届けしたい。
鈴鹿の山すそ、永源寺
公式サイトは、このあたりを琵琶湖の南、紅葉で知られる旧永源寺町として紹介しています。ワイナリーと同じ敷地には、図師禮三・清子夫妻が若いころから集めた美術品を見せるため、1992年に故郷の永源寺に開いた日登美美術館があります。バーナード・リーチの陶芸や歌川広重の浮世絵、棟方志功やジョアン・ミロの版画などを、テーマを替えながら展示しています。
畑は東近江市内にあります。自社の畑が5.5反、借りている畑が8.5反で、合わせて1町4反(1反はおよそ10アールなので、1.4ヘクタールほど)です。育てているのは、白ぶどうのシャルドネ(Chardonnay)とソーヴィニヨン・ブラン(Sauvignon Blanc)、黒ぶどうのカベルネ・サントリー(Cabernet Suntory)、メルロー(Merlot)、シラー(Syrah)、マスカット・ベーリーA(Muscat Bailey A)です。2017年からは、化学合成の農薬や肥料、除草剤を使わない有機栽培に切り替えました。
滋賀でワイン用のぶどうを育てる難しさは、醸造責任者の石本が商品の説明に書いています。蒸し暑い滋賀で育ったぶどうは酸が乏しく、長く試行錯誤を続けてきたといいます。石本が栽培の責任者として畑を見た最後の年になった2024年は、天候にも恵まれて、収穫の量も質もこれまででいちばんだったそうです。
2026年9月16日には、自社の畑の収穫を始めるために店を臨時に休んでいます。
歩み
1988年に果実酒の試験製造の免許を取り、1991年に期限付きの製造免許でヒトミワイナリーを開きました。1993年に濾過しない「にごりワイン」を500本だけ試しに造り、本免許を取った1994年からは、新酒をすべてにごりワインにしています。このころ辛口のものは、濾過して詰めていました。
1997年には、機械で栓をする、酸化防止剤を加えない発泡性のにごりワインを造りはじめます。1998年にパン工房を設け、1999年に株式会社ヒトミワイナリーを設立しました。2006年に、造るワインをすべてにごりワインにしています。
2008年には、大阪のカタシモワイナリー、京都の丹波ワインと関西のワイナリー三社で組み、共同のシリーズを出しました。これがのちに自社の「h3シリーズ」になります。2012年には原料をすべて国産のぶどうに切り替え、2017年に自社の畑を有機栽培にしました。会社の年表には、甘口と辛口の比率の移り変わりも書かれていて、2010年に4対6だったものが、2012年には2対8になり、2017年の時点では「ほとんどが辛口」になっています。
いまは年間およそ10万本を造っています。2026年11月1日に35周年を迎え、11月3日には初めての周年祭を開きました。
代表的なワイン
ヒトミワイナリーのワインは、酸化防止剤を加えず、清澄も濾過もしていません。会社は、15度以下の日の当たらない場所で保存するよう求め、通販では冷蔵便を選ぶよう案内しています。
ジシャバタケアカ(自社畑の赤ワイン)は、東近江の自社の畑で育てたマスカット・ベーリーA、メルロー、カベルネ・サントリー、ソーヴィニヨン・ブランを使い、木の樽で熟成させた赤ワインです。2024年のものはミディアムボディの辛口で、2026年2月に出ました。石本は、これまで苦戦してきた酸の乏しいぶどうでも、この年は簡単な醸造で納得のいく味わいになったと書いています。
Soif Blanc(ソワフ ブラン)は、山形県産のデラウェア(Delaware)、スチューベン(Steuben)、ナイアガラ(Niagara)でつくる辛口の白ワインで、喉の渇きを癒すようにごくごく飲めるシリーズの一本です。アルコール度数は9%と低めです。ナイアガラが手に入りにくくなったため、2024年のものから、皮を除いて仕込んだスチューベンを加えたといいます。
h3 IKKAKUは、マスカット・ベーリーAでつくる微発泡の辛口です。山梨県産の早摘みのぶどうに、糖度の高い滋賀県産のぶどうを合わせて発酵させ、瓶の中でもう一度発酵させて泡をつくっています。すっきりした泡と酸に、ぶどうの香りと甘やかさが感じられるとされています。
調査時点(2026年11月3日)の公式通販の税込価格は、ジシャバタケアカ(2024年、750ミリリットル)が3,960円、Soif Blanc(2024年、720ミリリットル)が2,332円、h3 IKKAKU(2025年、750ミリリットル)が2,420円でした。
