月山ワインとは?
月山ワイン山ぶどう研究所は、山形県鶴岡市の越中山(えっちゅうやま)にあるワイナリーです。国道112号線沿いの道の駅「月山」月山あさひ博物村の中にあり、ワインは「月山ワイン」の名前で売られています。運営しているのは、地元の農協、庄内たがわ農業協同組合です。
ここの始まりは、野山に自生していた山ぶどうでした。公式サイトの歴史のページによれば、旧朝日村では、ワインという言葉も知られていなかった時代から、村の人や出羽三山の修験者が山ぶどうでどぶろくをつくり、体に効く酒として飲んでいたといいます。それを売り物にしようとしたとき、酒造りの免許を取りに税務署へ通ったのは、酒蔵ではなく農協でした。農協がみずからワインをつくっているところは、日本では多くありません。
山ぶどうと、北の甲州
山ぶどうは、日本の山に自生するぶどうです。粒は小さく、ひと粒に種を4つも抱えていて、公式サイトによれば果汁になるのは原料の55%ほどしかありません。それでも色は濃く、酸と渋みがしっかりしています。
はじめは山から採ってきた実でワインをつくりましたが、年によって糖度も量もばらつきました。そこで、当時はまだ例の少なかった山ぶどうの栽培に取り組みます。専門家にも「聞いたことがない」と言われたといい、山から採ってきた枝から良い系統を選び続けて40年あまりになります。いまでは糖度が18度を超える実も珍しくなくなったそうです。
いま使っているぶどうは、山ぶどうのほかに三つあります。ヤマ・ソービニオン(Yama Sauvignon)は、山ぶどうとカベルネ・ソーヴィニヨンをかけ合わせて、山梨大学で生まれた黒ぶどうの品種です。月山ワインでは1997年ごろから朝日地区で育てています。セイベル9110(Seibel 9110)はフランスで生まれた交配品種で、月山ワインの白ワインの大半を占めます。朝日地区の粘土の畑と、海に近い袖浦(そでうら)地区の砂地の畑で育てています。
いちばん話の多いのが、鶴岡市櫛引(くしびき)地区の西荒屋(にしあらや)の甲州です。公式サイトによれば、幕末のころ、庄内藩の家老が甲州を取り寄せて屋敷に植えました。ところが、房が垂れ下がる姿が「武道(ぶどう)が下がる」に通じ、武士の恥だとして植えるのをやめ、西荒屋の農家に譲ったのが始まりとされています。公式サイトはこの土地を、甲州が栽培される北限の土地とも書いています。栽培の歴史は、公式サイトの品種のページでは250年、農協の通販の商品説明では約270年と、数字がそろっていません。
歩み
公式サイトによれば、山ぶどうでワインをつくろうという話が村で持ち上がったのは、昭和40年代の後半のことでした。北海道で山ぶどう系のワインがつくられたと聞き、「山ぶどうならいくらでもある」と動き出したといいます。
いちばん苦労したのは免許の取得でした。酒税法をよく知らないまま税務署と交渉を重ね、半信半疑の農家に声をかけて、1979年に製造を始めます。翌年の国税局の鑑定は「良」で、ここで「月山ワイン」が生まれました。最初の年は、ロゼワインを3,000本つくったところからのスタートです。醸造は、農芸化学を学んだ技術者が誕生のときから担ってきました。
自生の山ぶどうでは品質が安定しないため、研修に出かけて栽培を学び、農家を募って原料をそろえていきました。公式サイトは、いまでは70ほどの農家が山ぶどうを育てていると書いています。
2025年の日本ワインコンクールでは、ソレイユ・ルバン 甲州シュール・リー 2023が金賞を受けました。
代表的なワイン
看板のシリーズは「ソレイユ・ルバン(Soleil Levant)」です。
ソレイユ・ルバン 甲州シュール・リーは、鶴岡市産の甲州だけでつくる辛口の白ワインです。シュール・リーは、発酵のあとワインを澱(おり)の上に置いたまま寝かせる造り方を指します。農協の通販は、フルーティーな香りとキレのいい酸を持つと説明していて、岩ガキなどの魚介をすすめています。2023年産は、2025年のKura Master(クラマスター)の日本ワイン甲州部門でも金賞を受けました。
ソレイユ・ルバン ヤマソービニオンは、ヤマ・ソービニオンだけでつくる辛口の赤ワインです。色は紫を帯びた深い紅色で、果実の香りと野性味のある味わいを、やわらかく仕上げたとされています。甘辛い味付けの料理に合わせるようすすめられています。
ソレイユ・ルバン ヴィティスコワニティは、朝日地区で選び抜いた山ぶどうからつくる辛口の赤ワインです。名前は山ぶどうの学名(Vitis coignetiae)から取っています。甘辛いタレの肉料理や、うなぎの蒲焼、ジビエに合うとされています。
月山ワインの出発点にあたるのが、月山ワイン山ぶどう酒です。山ぶどうだけでつくる、アルコールの低い甘口のお酒で、公式サイトは「昔なつかしい味」と紹介しています。
調査時点(2026年11月3日)の農協の通販の税込価格は、ソレイユ・ルバン 甲州シュール・リーとヤマソービニオン(どちらも750ミリリットル)が2,310円、ヴィティスコワニティ(720ミリリットル)が3,300円、西荒屋の甲州だけでつくる西荒屋甲州(750ミリリットル)が2,750円でした。

