南三陸ワイナリーとは?
南三陸ワイナリー(MINAMI SANRIKU WINERY)は、宮城県の北東部、南三陸町(みなみさんりくちょう)の志津川(しづがわ)にあるワイナリーです。志津川湾のそばに醸造所とショップを構え、自らを「海の見えるワイナリー」と呼んでいます。
始まりは、2017年4月に町の地域おこし協力隊が始めた「南三陸ワインプロジェクト」でした。公式サイトによれば、町の内外の多くの人に支えられて、2020年10月に町内にワイナリーを開きました。
このワイナリーにしかない取り組みが、海の中でワインを寝かせる「海中熟成」です。瓶詰めしたワインの一部を、町の漁師の協力で志津川湾に沈め、時間をかけて熟成させています。公式サイトは、ワインを通じて町の自然や食、人をつなぎたいという思いを、繰り返し書いています。
湾を見下ろす山の畑と、牡蠣棚の海
ワイン用のぶどうづくりは、町の入谷(いりや)地区から始まりました。入谷の童子山(どうじやま)には、いまもぶどう畑があります。その後、畑は町の北の端、気仙沼市にまたがる田束山(たつがねさん)へ広がりました。

公式サイトは、田束山を選んだ理由として、昼と夜の気温の差が大きく、日当たりと風通しがよいことを挙げています。そのうえで、ここが志津川湾を一望できる町いちばんの眺めの場所でもあり、昼は緑と海を感じながらの農業体験、夜は星空の下のワイン会と、人が集まる場所にしたかったとも書いています。
畑はもう一つ、山形県上山市にもあります。公式サイトは、南三陸産のぶどうだけでつくるワインを1本でも多く造ることを目標に掲げていますが、いま売られているワインには、山形県産のぶどうを使ったものも多くあります。
海中熟成は2020年2月に、町の戸倉(とくら)地区の漁師と一緒に本格的に始めました。海の中は空気中より音が速く伝わり、生き物や波、船のエンジンの音が細かな振動として届くので、熟成が早まるといわれている、と公式サイトは説明しています。協力する戸倉の漁師は、環境に配慮した牡蠣の養殖に取り組んでいて、公式サイトによれば、水産養殖管理協議会の「ASC認証」を日本で初めて取りました。海中熟成のワインの瓶には、引き上げたときの貝やフジツボが付いていることがあるそうです。
歩み
公式の年表によれば、最初の一歩は2016年の春でした。仙台市の秋保ワイナリー(仙台秋保醸造所)から贈られたぶどうの苗木100本を、入谷地区に植えています。2017年の春にプロジェクトを始め、苗木を700本植え、夏からは秋保ワイナリーで栽培と醸造の研修を受けました。最初の数年は、ほかのワイナリーに醸造を頼む「委託醸造」で、2017年秋にスパークリングワインを約300本、2018年秋に白ワインを約2,000本造っています。
2019年2月に南三陸ワイナリー株式会社を設立し、4月にワインを売り始めました。代表の佐々木道彦(ささき みちひこ)さんは、大手楽器メーカーで新しい事業の開発に携わったのち、東日本大震災のあとに仙台市へ移り住み、2019年1月に南三陸町の地域おこし協力隊に着いた人です。同じ2019年の10月には、入谷で育ったシャルドネを初めて収穫しました。
2020年は動きの多い年でした。2月に海中熟成を始め、4月に田束山に約2,300本、5月に山形県上山市に約500本の苗木を植え、10月に志津川地区に醸造所とショップを開いて、11月から自社で醸造したワインを売り出しています。12月にはショップの中でレストランの営業も始めました。
ラベルの絵柄は、江戸時代の中ごろに神社の神主が始めたという切り紙「キリコ」をもとにした、創作キリコです。町の上山八幡宮(かみのやまはちまんぐう)の禰宜、工藤真弓さんが、その年のワインにまつわる話をもとに実際に切っています。2024年には、地域をつなぐ5年間の取り組みがグッドデザイン賞の「グッドデザイン・ベスト100」に選ばれました。
代表的なワイン
DELAWARE ORANGE(デラウェア・オレンジ)は、よく熟したデラウェア(Delaware)を皮ごと醸して発酵させた、辛口のオレンジワインです。皮から出た鮮やかなオレンジ色をしていて、桃やすみれの花を思わせる香りがあり、心地よい酸と、余韻にかすかな渋みがあります。ぶどうは山形市本沢(もとさわ)地区のデラウェアです。ワインの審査会「サクラアワード」で、2025年と2026年の2年続けて最高賞のダイヤモンドトロフィーを受けています。合わせる料理として、会社はタコのマリネや餃子、ヤンニョムチキンを挙げています。
MERLOT / YAMA SAUVIGNONは、山形県天童市のメルロ(Merlot)を中心に、鶴岡市のヤマ・ソーヴィニヨンと寒河江市のシラー(Syrah)を合わせた辛口の赤ワインです。メルロはフランス産のオークの樽で23か月熟成させています。ガーネット色で、ブラックベリーやプラムの香りに、樽からのバニラや黒胡椒の香りがほのかに重なります。
MINAMISANRIKU CHARDONNAYは、入谷の童子山の畑で育ったシャルドネ(Chardonnay)を、フランス産のオークの樽で3か月熟成させた辛口の白ワインです。りんごのような香りと、ふくよかな果実味、心地よい酸があるとされています。
志津川湾海中熟成ワインには、白ワインと赤ワインがあります。白ワインのシャルドネ2023は、2025年11月から2026年7月までの8か月間、志津川湾の海の中で寝かせたものです。
調査時点(2026年11月3日)の公式通販の税込価格は、750ミリリットルでMERLOT / YAMA SAUVIGNONが2,970円、海中熟成のシャルドネ2023が5,500円でした。DELAWARE ORANGE 2025(2,420円)とMINAMISANRIKU CHARDONNAY 2023(3,850円)は売り切れと表示されていました。

