くずまきワインとは?
くずまきワインは、岩手県の北部、葛巻町(くずまきまち)の江刈(えかり)にあるワイナリーです。会社の名前は株式会社岩手くずまきワインで、1986年に設立されました。ワインの主な原料は、町の周りの山に昔から自生していた山ぶどうです。
始まりは町長のひと言でした。公式サイトの「『山ぶどう』とともに」というページは、その場面をこう書いています。
「山ぶどうでワインをつくろう。」 すべてはこの一言で始まりました。
1979年、当時の町長だった高橋吟太郎が、山ぶどうのワインを町の新しい産業にして、地域を元気にできないかと考えたのが出発点だといいます。同じページは、当時の町民について「ワインづくりはおろか、ワインも飲んだことのない人ばかり」だったと書いています。
牛と森に囲まれた高原の町
葛巻町は、町の面積の86パーセントを森林が占め、標高1,000メートル級の山々に囲まれた高原の町です。町長のメッセージは、葛巻を「酪農と林業の町」と呼び、町の目指す姿を「ミルクとワインとクリーンエネルギーのまち」と掲げています。町のウェブサイトの見出しにも「北緯40度」の文字があります。
ワイナリー自身は、この土地がぶどうづくりに向いているとは言っていません。公式サイトには「葛巻町は決してぶどう栽培に適した土地ではありません」とあります。そのなかで山ぶどうは比較的寒さに強く、町の周りにも自生していたことが、山ぶどうを選んだ理由として挙げられています。山ぶどうは酸味が強く、果汁は赤紫色をしています。
山ぶどうは、ワイナリーが管理する畑を中心に、葛巻町や近くの市町村の農家が育てています。公式サイトは一年の作業をこう紹介しています。芽吹きは5月中旬で、霜が降りて芽が焼けると、その年の収穫が大きく減ります。6月上旬に花が咲くと、風や虫による受粉に加えて、雌花のひとつひとつに人の手で授粉させています。収穫は10月中旬、糖度が15度を超えてからで、色の入っていない実や熟していない実は選り分けて取り除きます。冬の剪定は12月から3月にかけて行います。
歩み
町は栽培と醸造を学ばせるために職員を東京へ送り、葛巻産の山ぶどうで試験的にワインを仕込みながら、ワインを町に広める取り組みも進めたと公式サイトにあります。こうした準備を経て、1986年2月に会社が設立されました。
商品のページによれば、くずまきワインが最初に出したワインは1988年の「山ぶどうワイン」と「フォーレ」です。ワイナリーを開いたあとも、品質を上げるための試行錯誤と、名前を知ってもらうまでの苦労が続いたと、会社は振り返っています。
公式サイトは「オールジャパンのワインを造りたい」というのが創業のころからの思いだったと書き、輸入した樽を使っていることに、どこかもどかしさを感じていたといいます。日本のミズナラで作った樽が、有明産業をはじめとする木材・林業の関係者の手で生まれ、葛巻産の山ぶどうをその樽で発酵・熟成させたワイン「KUZUMAKI」が300本の限定で造られました。仕込んだあとすぐ樽に移して発酵させ、瓶詰めの直前までの2年間、酵母を含む澱(おり)と一緒に同じ樽で寝かせています。この取り組みは2023年度のグッドデザイン賞を受けています。会社はこの樽を「国産樽」ではなく、あえて「日本樽」と呼んでいます。
代表的なワイン
山ぶどうワインは、葛巻町産の山ぶどうだけでつくる、やや甘口の赤ワインです。「スウィートリザーヴ製法」で造り、山ぶどうの果汁をブレンドして果実味を増しています。濃厚な口当たりとしっかりした酸があり、フルーティーで飲みやすい味わいとされています。アルコール度数は8.5度と低めで、8〜12度ほどに冷やして飲むよう勧められています。2023年の第1回日本山ぶどうワインコンクールでは「紫賞」を受けました。このコンクールは金・銀・銅ではなく、平安時代からの色の順位にならった賞を設けていて、紫賞が金賞にあたり、続いて空賞(銀賞)、茜賞(銅賞)となっています。
蒼(あお)は、山ぶどうの血を引く交配品種「小公子(しょうこうし)」だけでつくる辛口の赤ワインです。凝縮したドライフルーツのような香りと、野性味のある味わいとされています。
フォーレの赤ワインは、山ぶどうワインと並んで1988年に最初に出たワインです。マスカット・ベーリーA(Muscat Bailey A)とベーリー・アリカントA(Bailey Alicante A)が主な原料で、さわやかな酸と渋みの釣り合ったすっきりした辛口の赤ワインです。会社は、肉料理にも和食にも合うと紹介しています。
調査時点(2026年11月3日)の公式通販の税込価格は、720ミリリットルの赤ワインで、山ぶどうワインが3,740円、蒼が3,180円(在庫切れ)、フォーレが1,980円でした。会社は2026年10月に価格を改定したと告知しています。

