富士山ワイナリーとは?
富士山ワイナリー(Fujisan Winery)は、静岡県富士宮市(ふじのみやし)の根原(ねばら)、富士山の西のふもとに広がる朝霧高原(あさぎりこうげん)にあるワイナリーです。会社は自らを「富士山に一番近いワイナリー」と呼んでいます。育てているのは、日本で古くから育てられてきたぶどうの品種、甲州(こうしゅう)です。
創業者のアーネスト・シンガー(Ernest Singer)は、良いワインは良いぶどうから生まれるという考えから、ぶどうをすべて自分たちの畑で育てることにこだわってきました。良いぶどうは美しい景色の場所から生まれる、とも考えていて、日本中を探して行き着いたのが富士山を望むこの高原だったと、公式サイトは書いています。
敷地には2024年7月にカフェ「Café Shizen(カフェ・シゼン)」が開きました。カフェの目の前には富士山が広がっています。
標高900メートルの垣根の畑
シンガーがこの高原に求めたのは、標高の高さでした。温暖化が進むなかで、甲州にきちんとした酸を持たせるには、気温の下がる高い土地が要ると考えたからです。
ワイナリーの近くの畑を、会社は「富士サイト」と呼んでいます。標高はおよそ900メートルで、2006年に0.1ヘクタールで甲州の試験栽培を始め、2007年に2ヘクタールへ広げました。いまは甲州とシャルドネ(Chardonnay)を育てています。
甲州は日本では長く、頭の上に棚を張って枝を広げる棚仕立てで育てられてきました。この畑では、木を一列に並べて枝を上へ伸ばす欧州式の垣根仕立てを選び、木と木の間を1.5メートルにしています。木にあえてストレスをかけて、質の高い実をつけさせるためです。ボルドー大学醸造学部の教授だったドゥニ・デュブルデュー(Denis Dubourdieu)の助言によると、会社は説明しています。
もう一つの畑は、同じ富士宮市の人穴(ひとあな)にあります。標高600メートルほどの南向きの斜面で、海から24キロメートルほどしか離れておらず、海風が通り抜ける涼しい畑だといいます。2019年に試験を始め、2021年に甲州を3,000本植えました。メルロ(Merlot)なども育てています。
会社の畑は、山梨県の牧丘(まきおか)にもあります。標高の高い冷涼な土地として、シンガーが最初に畑を持ったところで、代表的なワインのいくつかは、いまも牧丘の甲州からつくられています。

歩み
シンガーが甲州に取り組みはじめたのは2003年ごろです。公式サイトによれば、日本ワインがブームになる前で、甲州は栽培が減り、明るい未来を描きにくい時期でした。シンガーはボルドー大学のデュブルデュー教授を訪ね、その助言で甲州のDNAを調べてもらい、ヨーロッパのワイン用ぶどうと同じヴィティス・ヴィニフェラ(Vitis vinifera)に由来すると分かったといいます。教授をコンサルタントに迎えて造った「甲州・キュヴェ・ドゥニ・デュブルデュー 2004」は、アメリカのワイン評論家ロバート・パーカーに高く評価され、甲州が注目されるきっかけになったと会社は書いています。
当時、日本のワインはEU(欧州連合)へ輸出できませんでした。国際ブドウ・ワイン機構(OIV)の基準に合っているかを確かめる検査機関が、国内に無かったためです。会社が関係する機関に働きかけ、国内の研究所がEUの認める検査機関になりました。2007年12月、甲州の「Shizen Cuvée Denis Dubourdieu 2006」がEUへの輸出の認定第1号になり、翌年1月にイギリスへ送られたと公式サイトにあります。
2007年には、朝霧高原の畑とその近くに7,300本、さらに長野県の上田と塩尻、山梨県の牧丘にも植えて、この年だけで甲州を1万本植えました。2009年には、牧丘の垣根の甲州から、いまの「ドメーヌ・シゼン」にあたるワインが生まれます。糖度が上がりにくいといわれる甲州で19.8度を記録し、垣根で甲州を育てた先駆けの例になったと会社はしています。
2013年には教授の勧めで、シャンパーニュと同じ造り方のスパークリングワインを仕込みはじめましたが、教授はその完成を見ずに亡くなりました。その後は、シャトー・ムートン・ロートシルトの醸造長だったパトリック・レオンが助言し、レオンが亡くなったあとは、シャンパーニュのブルーノ・パイヤール(Bruno Paillard)と、イスラエルのゴラン・ハイツ・ワイナリーのヴィクター・ショーンフィールドが加わっています。
会社がいま取り組んでいるのは、ウイルスの問題です。公式サイトは、日本の甲州はすべてリーフロールというウイルス病にかかっていて、そのために育ちが遅れ、収穫までに糖度が上がりにくいと書き、研究機関と協力して解決を目指しています。会社が公開した写真の説明によれば、ワイナリーの温室では、中部大学が特別な方法でつくったウイルスを持たない苗木を育てていて、育ったら感染を防ぐために離れた畑へ移す計画です。
代表的なワイン
ドメーヌ・シゼン 甲州 キュヴェ・ドゥニ・デュブルデューは、牧丘の畑に2007年に垣根で植えた甲州からつくる白ワインです。自社のぶどうの一番搾りの果汁だけを使い、ステンレスのタンクで6か月、澱(おり)と一緒に寝かせてから、毎年春に瓶に詰めます。2025年について、ソムリエの阿部誠は、ライムや桃を思わせる香りにパッションフルーツのような南国の果物の香りが重なり、いきいきとした酸が果実味を支える辛口と評しています。
フジサンワイナリー甲州は、主に牧丘の棚仕立ての甲州を使う白ワインです。樽で寝かせた甲州を2割ほど混ぜていて、甲州らしいほろ苦さと酸のある軽やかな味わいとされています。会社は、ワイナリーでいちばん売れている自社のワインだとしています。
シゼン スパークリング 甲州は、甲州の特徴を生かしてスパークリングワインを造っては、というデュブルデュー教授の助言から生まれました。牧丘の自社畑の甲州だけを使い、シャンパーニュと同じく瓶の中で二度目の発酵をさせ、4年以上寝かせています。2013年が最初の年で、会社は和食によく合うと紹介しています。
シゼン・アカフジ・リザーヴは、ワイナリーで初めての赤ワインです。マスカット・ベーリーA(Muscat Bailey A)とメルロを合わせ、ぶどうに付いている野生の酵母だけで発酵させ、ろ過をせずに瓶に詰めています。阿部誠の評では、熟したいちごや野いちご、バラの花びらの香りがあり、すき焼きや照り焼きのような甘辛い和食に合うとされています。
調査時点(2026年10月27日)の公式オンラインショップの税込価格は、フジサンワイナリー甲州が2,420円、ドメーヌ・シゼン(2025年)が4,620円、シゼン スパークリング 甲州(2020年)とシゼン・アカフジ・リザーヴ(2023年)がそれぞれ7,700円でした。

