ドメーヌ・ボーとは?
ドメーヌ・ボー(Domaine Beau)は、富山県南砺市(なんとし)の立野原(たてのがはら)にあるワイナリーです。運営するのはトレボー株式会社で、社名の「トレボー(très beau)」はフランス語で「とても美しい」という意味です。会社は「美しい」を「正しい」「誠実」とも読みかえて、畑もワインも美しくあることを大切にすると書いています。
会社は富山を「ワイン不適作地」と呼ばれてきた土地だと書いています。それでもこの丘にワイナリーを開いたのは、ワインと日本酒を45年売ってきた一人の酒屋でした。目指すのは、富山の海の幸に寄り添うワインです。会社はこれを「身土不二(しんどふじ)」という言葉で説明しています。暮らす土地でとれたものを食べることが心と体の健康につながる、という考え方です。
散居村を見下ろす開拓地の丘
立野原は、東・西・南の三方を小高い山に囲まれ、北へ向かってゆるやかに下っていく丘陵です。会社によれば、晴れた日には北の遠くに富山湾が見えます。家々が田んぼの中に散らばって建つ砺波平野の散居村(さんきょそん)も見渡せるといい、会社はこれを「日本最大の散居村」と紹介しています。
この丘は、かつての開拓地です。会社の設立物語によれば、戦時中は演習場で、ワイナリーを建てようとしたころは民家もなく、跡継ぎのいない耕作放棄地が点在する荒れた土地だったといいます。
畑は2キロ四方ほどの範囲に点在しています。雨はやや多めで、ときおり医王山(いおうぜん)から強い風が吹き下ろしますが、ふだんはやわらかな風が吹き抜け、日の光に恵まれた場所だと会社は書いています。何年か造ってみて感じたのは、ぶどうに「美しい酸」が残ることだったそうです。
植えているのは、2024年の時点でヨーロッパの品種ばかり14種類です。富山の粘土質の土に合いそうなメルロー(Merlot)、どんな土地にもなじむシャルドネ(Chardonnay)、富山の気候に合うと考えたカベルネ・フラン(Cabernet Franc)とソーヴィニヨン・ブラン(Sauvignon Blanc)のほか、温暖な土地の品種のシラー(Syrah)やヴィオニエ(Viognier)、ドイツやフランスのアルザス地方で知られるリースリング(Riesling)とゲヴュルツトラミネール(Gewürztraminer)まで、富山でどんな顔を見せるかを試しながら育てています。
歩み
公式サイトの設立物語によれば、創立者の中山安治(なかやま やすはる)は、ワインと日本酒を売る仕事を45年続けてきた人です。酒の安売り競争で店の商売が苦しくなり、ほかの事業にも失敗し、さらに癌が見つかりました。命をとりとめたあと、「体が痺れるほど素晴らしいワイン」に出合い、酒を売るのではなく、その魅力を伝える側に回ろうと決めたといいます。支えてくれた地域への恩返しに、自分が死んでも100年、200年先まで残るワイナリーを造ろうと準備を始めたのは2018年、67歳のときでした。
富山県高岡市の出身だった中山にとって、立野原は「宝の山、まさに黄金の丘」に見えたそうです。ところが地元の人たちにとって中山はよそ者で、畑を買ったり借りたりする話はなかなか進みませんでした。一人また一人と説得して畑が増えるにつれ、荒れていた土地は緑の区画に変わっていきます。ある秋の日、地域の元町会議員が事務所を訪ねてきて、立野原がこんなに美しくよみがえったと礼を言って帰っていった、と物語は伝えています。会社が掲げる「情熱は伝播する」という言葉は、このころの経験から来ています。
2020年に醸造棟ができ、最初のワインが生まれました。醸造棟にはイタリア製とクロアチア製のステンレスのタンクが25本並び、ショップの窓からその設備を見ることができます。会社によれば、寄付やクラウドファンディング、ぶどうの樹のオーナー制度などで、これまでに1,000人を超える人から支援を受け、その全員の名前を醸造棟の壁に掲げています。
2024年は猛暑と害虫で、ぶどうの収穫量が大きく減りました。翌年の新年のあいさつで、会社はそのことを報告しています。2026年の秋には、初めて収穫できたシュナン・ブラン(Chenin Blanc)を仕込みました。
代表的なワイン
ワインには「立野原」の名前の付いたシリーズと「ドメーヌボー」のシリーズがあり、ほかに長野県の安曇野・須坂・高山村、山梨県の明野のぶどうで造るワインもあります。
立野原 シャルドネ樽熟成は、富山県産のシャルドネだけを樽でじっくり熟成させた白ワインです。2023年のものは、ミルクのようなやわらかな樽の香りに、樽から来る甘みとうまみが広がり、穏やかな酸とほのかな苦みが味を引き締めるとされています。
立野原 ナンサンブルは、淡いピンク色のロゼワインです。2024年のものはシャルドネ、シラー、メルロー、カベルネ・フラン、タナ(Tannat)の5品種を一緒に仕込んだもので、オレンジの皮のような渋みと苦み、酸があり、会社は胡椒などのスパイスの効いた料理に合わせることをすすめています。
立野原 ピノノワール レゼルブは、天気に恵まれた2023年のピノ・ノワール(Pinot Noir)の赤ワインです。熟成が進んだような、ややくすんだ色合いで、腐葉土やきのこのような香りにカカオが混じり、長く熟成させられそうな渋みがあるとされています。
変わったところでは、立野原 シャルドネ おりがらみがあります。日本酒の酵母(金沢酵母と呼ばれるものなど)で発酵させ、濾過せずに瓶に詰めた、やや甘口の白ワインです。バナナのような穏やかな香りに、吟醸酒のような華やかさが後味に残るといいます。
調査時点(2026年10月27日)の公式サイトの商品一覧(2026年1月現在)の税抜価格は、立野原 シャルドネ樽熟成(2023年)が5,000円、立野原 ナンサンブル(2024年)が3,300円、立野原 ピノノワール レゼルブ(2023年)が8,000円、立野原 シャルドネ おりがらみ(2025年)が4,200円です。「ドメーヌボー」のシリーズは2,700円から3,500円でした。

