深川ワイナリー東京とは?
深川ワイナリー東京(Fukagawa Winery Tokyo)は、東京都江東区の古石場(ふるいしば)にある小さな醸造所です。門前仲町の駅から歩いて6分ほどのビルの1階で、2016年からワインをつくっています。運営しているのは、飲食店の経営などを手がける株式会社スイミージャパンです。
ワインに使うぶどうは、自分たちの畑ではなく、山梨や長野、青森、山形などの農家から譲り受けています。それを東京まで運び、房から実を外して潰す作業(除梗破砕)から、搾り、澱引き、ろ過、瓶詰め、ラベル貼りまでを、すべてこのビルの中で行っています。公式サイトはこれを「大きなワイナリーと同じく、醸造にかかわるすべての作業をここで行っています」と書いています。
産地から離れた街なかで、運んできたぶどうからワインをつくる醸造所を、会社は「都市型ワイナリー」と呼び、見学のページでは「東京の街中で楽しむ、ちょっと特別なワイナリー体験」と紹介しています。
下町のビルで、一年中仕込む
ぶどうの産地にあるワイナリーとの違いとして、公式サイトの「醸造人の思い」は、一年を通してさまざまな地域のぶどうからワインをつくっていることを挙げています。秋には醸造の担当者が長野や山梨までトラックを運転して収穫に出かけ、春にはニュージーランドやオーストラリアなど、季節が日本と反対になる南半球から届いたぶどうを仕込みます。小さな醸造所なので、毎日ワインの状態を確かめながら造れるとも書いています。
同じページは、秋に仕込むものを「日本ワイン」、春に仕込むものを「国産ワイン」と書き分けています。日本ワインは、国内で収穫したぶどうだけを使って国内でつくったワインのことで、2018年10月から国の表示の決まりで使い方が定められました。輸入したぶどうを東京で仕込んだワインは、国内でつくっていても日本ワインとは名乗れません。オンラインストアにも、「山形県産デラウェア」や「山梨県韮崎市マスカットベーリーA」と並んで、「豪州カベルネソーヴィニヨン」の赤ワインが出ています。
東京で育てたぶどうも、わずかにあります。公式サイトの「ぶどう栽培について」のページによれば、門前仲町駅のすぐそばにあるスーパーの屋上で、プランターに100本あまりの苗を植えています。3年目の8月に初めてバケツ1杯分を収穫しましたが、ワインにするには足りないため、その年に仕込むすべてのワインの発酵に使う酵母にしたといいます。ページには日付がなく、何年のことかは分かりませんでした。同じスーパーの3階のテラスにある「深川ワインガーデン」は、ぶどう畑を併設した屋上のレストランですが、調査時点(2026年10月27日)では休業中です。
歩み
運営会社のスイミージャパンは、2006年9月に設立されました。会社概要によれば、本社は醸造所と同じ古石場のビルにあり、飲食事業と並んで「果実酒製造、卸小売り」を事業に掲げています。醸造所を開いたのは2016年で、オンラインストアでは2026年に「10周年記念企画」として、客と一緒にワインをつくる企画を募っています。
深川ならではの取り組みとして続いているのが、ワインを海に沈めて熟成させる試みです。きっかけは、沈没船から引き揚げられたワインがおいしかった、というニュースだったと公式サイトは書いています。地元の活性化と、海の新しい使い道につながればという考えから、2018年に東京海洋大学との共同研究が始まりました。東京でつくったワインを東京の海に沈めることから、会社はこれを「江戸前ワイン」と呼んでいます。
2020年12月24日には4回目として長野県産のカベルネ・ソーヴィニヨン(Cabernet Sauvignon)を沈め、半年後の2021年6月に引き揚げる予定だと公式サイトにあります。引き揚げたワインは、地上で熟成させた同じワインと2本組にして売られます。調査時点のオンラインストアには、6回目として豪州産カベルネ・ソーヴィニヨンの「セラヴィ・ルージュ」の組が出ていました。
同じ会社は、大阪国際空港の中の「大阪エアポートワイナリー」と、渋谷の「渋谷ワイナリー東京」も営んでいます。
代表的なワイン
イーストベイ・アッサンブラージュ 無ろ過は、「東京らしいワイン」として、さまざまな人と物が集まる東京をイメージしてつくるブレンドの赤ワインです。商品名には「江東区お土産品認定」とあります。2023年は、ソムリエと調香師の経歴を持つ若手の醸造担当2人が、2つの地域の3品種を合わせました。カベルネ・フラン(Cabernet Franc)を主体に、カベルネ・ソーヴィニヨンがきれいな酸としっかりした渋みを、メルロ(Merlot)が豊かな果実味とやわらかな口当たりを加えているといいます。最初は冷やして、温度が上がるにつれて変わる味を楽しむ飲み方が勧められています。
深川ヌーボーは、その年に収穫したぶどうでつくる新酒です。2026年の第一弾は山形県産のデラウェア(Delaware)を使い、2026年10月21日に予約と販売が始まりました。ステンレスのタンクで、ぶどうに付いている野生の酵母で発酵させ、酸を足さず、酸化防止剤を加えず、ろ過もしていません。なめらかな口当たりに果実味がほのかに感じられる、軽やかな辛口の白ワインです。
海中熟成ワインは、東京湾で熟成させたワインと、地上で熟成させた同じワインの2本組です。「セラヴィ・ルージュ」は、酸がしっかりした軽やかな赤ワインで、うまみと穏やかな渋み、ベリーの風味があるとされています。
調査時点(2026年10月27日)の公式オンラインストアの表示価格は、イーストベイ・アッサンブラージュ 無ろ過(2023年)が3,300円、深川ヌーボーの山形県産デラウェア(2026年)が2,860円、海中熟成と地上熟成の2本組(セラヴィ・ルージュ 2023年)が8,800円でした。

